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このページでは、老人ホームや介護施設で提供する食事に使用する野菜の仕入れについて、おさえておくべきポイントや課題などを説明しています。
年を重ねるにつれて、身体の機能はどうしても低下していくものです。ひざや腰などが注目されがちですが、食べるための機能である嚥下機能も、低下していることも認識しておく必要があります。嚥下に関連する機能の低下として挙げられるのは、具体的には次のようなものになります。
私たちが食べ物や飲み物を口に入れたときに味を感じるのは、口の粘膜や舌の表面にある味蕾がそれを感知しているからです。けれども、年を重ねるにつれ、味蕾の数が少なくなるため、味の感じ方が鈍くなってしまうのです。かつてほどしっかりと味を感じることができなくなると、どうしても料理の味が薄いように思われるため、濃い味付けの料理を好んだり、あるいは食欲がなくなって食事の量が減ってしまったりする傾向があります。
高齢になると、どうしても歯の本数が少なくなったりアゴの筋力が弱まったりするため、かたい食べ物を食べるのが困難になりがちです。咀嚼機能が低下している状態では、しっかりと食べ物を噛んだり噛み切ったりすることができなくなるからです。また、咀嚼した食べ物を飲み込むための嚥下機能の低下もみられます。これは、唾液の分泌量が少なくなり、しかも飲み込む力が弱まっていることが原因だと考えられます。そしてその結果、誤嚥を起こしやすくなってしまうのです。
栄養のバランスがわるい食生活になりがちなのも、懸念すべき問題です。噛む力が弱まっているため、野菜や肉など、噛み切るのが難しい食べ物を避けるようになります。その結果、食べやすいパンやお茶漬けなどで食事をすませてしまう高齢者が多い傾向にあります。そのためどうしても、食物繊維やタンパク質、ビタミン、ミネラルなどの栄養素を充分に摂取していない状態におちいってしまうのです。
高齢者にとって食べにくい食材と食べやすい食材を把握しておくことで、適切な食材選びにつなげることができます。
◆キュウリやキャベツなどのような硬さのある野菜
◆ごぼうやタケノコ、ふきなどのような繊維が残りやすい野菜
◆ふかした芋のように水分がすくない野菜(のどに詰まるリスクが高まる)
食べやすい野菜は、ヌメリがあるものです。というのは、ヌメリがあれば、分泌される唾液の量が少なくても、口のなかで食べ物がまとまるため、飲み込みやすくなるからです。例として挙げられる食材は、種を除いたオクラや調理瓶詰のなめ茸、納豆、とろろ昆布、 モロヘイヤなどです。
高齢者にも野菜が食べやすくなるように調理方法を工夫することが大切です。たとえば、トマトであれば、皮が口のなかに残らないように、熱湯にくぐらせて湯むきをしておきます。嚥下機能の低下度合いによっては、種も取り除いておくことをおすすめします。また、キャベツの場合は、緑黄色をしたやわらかい春キャベツを選びたいところです。豆類やイモ類は、すり身にして、つみれなどにするのがよいでしょう。
食材を調達する際におさえておきたいポイントは、人手不足の考慮です。介護業界は慢性的な人手不足におちいっており、できれば調理の手間もできるかぎり削減したいところです。たとえば、野菜であれば、カット野菜を仕入れるなどの工夫が求められます。
野菜を販売している業者のサポート体制の充実度合も、おさえておきたいポイントです。老人ホームや介護施設で暮らす高齢者は、通常よりも食事の工夫が必要です。そのため、リクエストに柔軟に対応してくれる仕入れ業者を選ぶようにしましょう。アレルギーの禁止食や献立カスタマイズ、長めの賞味期限などに対応している業者もあります。